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大河原克行の なぜ、今年のエプソンはプリンタ事業で強気なのか?

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エプソンvsキヤノン 第1回

大河原克行より
詳しくはここから

エプソンvsキヤノン
第1回 なぜ、今年のエプソンはプリンタ事業で強気なのか?

 国内のインクジェットプリンタ市場は、セイコーエプソンとキヤノンが2分する市場である。

 年末商戦がたけなわとなる12月のシェアを見るとそれは明白だ。主要量販店のPOSデータを集計するBCNの調べによると、2010年12月の販売実績では、キヤノンのシェアが45.2%に対して、エプソンのシェアが43.3%。この2社で88.5%という圧倒的な構成比となっている。

 商戦期になればなるほどこの2社の市場シェアが高まり、残りのわずかな市場を、ブラザーや日本ヒューレット・パッカードが取り合うという構図だ。

 そのため、年末商戦突入前にもなると両社の舌戦も激しくなる。毎年8月末から9月にかけて行われる新製品発表の席上では、その様相が年を追うごとに激しくなる。

 2011年の場合は、8月31日に両社の新製品発表が重なったが、その様子は例年以上のものだった。

 午前中のエプソンの会見では「今年は51%のシェアを獲得する」と宣言。それに対して、午後のキヤノンの会見では「トップシェアを獲得する」との発言が飛び出し、両社ともにまったく譲らない状況。この2社のコメントを聞く限り、ブラザー、日本ヒューレット・パッカードが入り込む余地はまったくないということになる。


 2011年のエプソンは、例年以上に強気だ。

 それにはいくつかの理由がある。

 ひとつは、コンシューマ向けのカラリオシリーズにおいては、売れ筋モデルの本体カラーにレッド色を追加。標準モデルのブラック、昨年追加したホワイトに加えて3色展開を行い、ユーザーの選択肢を広げたことだ。



個人向けインクジェットプリンタの主力製品であるEP-804A

 セイコーエプソン 業務執行役員 情報画像事業本部長・奥村資紀氏は、「昨年投入したホワイトモデルは、販売台数の約半分を占めた。今年はブラックとホワイトがそれぞれ35%、レッドで30%を見込む」と、ほぼ3分割するであることを予測する。

 ノートPCやデジカメ、携帯電話やスマートフォンでも赤い筐体を採用したモデルが人気を博していることを背景に追加したカラーであり、色に敏感なユーザーを取り込む考えだ。

 選択肢という点では、コンパクト化した製品をラインアップした点も今年の特徴だ。昨年のモデルに比べて、体積を約35%小型化した製品を投入。「プリンタは筐体が大きい製品であるというイメージを持っていた人や、置き場所に困っていた人にも、この製品を選んでいただけるようになる」と新規の需要開拓にも意欲をもみせる。




無線LAN内蔵のコンパクトモデル「PX-434A」


PX-434Aは、昨年発売したPX-403A(右)に比べて大幅に小型化されている

 「エプソンは、インクジェットプリンタの開発、設計、製造、品質保証、販売、サポートまでのすべてを自前でやっているメーカー。基板や電源ユニットの小型化、配置の最適化などによって小型化を実現。すべてを自前でやっている特徴を生かすことができた製品」と胸を張る。

 そして、3つめには、オフィス向けインクジェットプリンタの強化である。これまでビジネスプリンタといえば、レーザープリンタが常識だった市場に、ビジネスインクジェットプリンタとして本格展開していくことになる。

「SOHOや中小企業、または大手企業でも部門単位でプリンタを利用しているケースが多い。調査をしてみると、これらの用途では、印刷枚数が5枚以下の使い方が約9割を占めている。レーザープリンタは大量枚数を印刷する際には効果があるが、5枚以下の印刷というオフィスの日常的な使い方のなかでは、ウォームアップタイムがなく、最初の1枚を速く印刷できるインクジェットプリンタの方が適している。1枚あたりの印刷コストが低く、消費電力も少なくて済み、さらに封筒やラベルにも印刷できる多様性も特徴。耐久性においても十分業務利用に耐えうるものを製品化できた。今年はビジネス向けインクジェットが本格展開できる要素が揃ってきた」と期待を込める。

 そして、最後に国内市場への取り組みだけではなく、新興国市場での取り組みが加速している点も見逃せない。

 国内プリンタメーカーのビジネスモデルは、本体を安く販売して、インクカートリッジで収益をあげるといったものだ。

 しかし、新興国では互換インクが市場を席巻し、日本のプリンタメーカーのビジネスモデルが成り立たない状況にあった。

 そうしたなか、エプソンが昨年から新興国向けに投入した大容量インクカートリッジ搭載モデルが市場で注目を集めはじめ、新たなビジネスモデルとして成り立つようになってきたのだ。追加のインクカートリッジを追加せずに長期間に渡って利用できるこの製品は、本体価格がやや割高の設定になるが、エプソンが想定する収益を確保できるビジネスモデルとして定着しようとしている。

 2010年10月にインドネシアで発売したのを皮切りに、タイ、インド、韓国、中国、台湾、ベトナムでも展開。今年9月以降、ロシア、ブラジル、コロンビア、エクアドルと販売エリアを拡大しており、さらには東欧地域などにも展開していく考えだ。

 国内ではコンシューマ向けプリンタの選択肢を広げるとともに、ビシネス向けインクジェットプリンタを本格展開。そして、新興国での新たなビジネスモデルの確立といった動きにも乗り出している。

 エプソンが強気な理由はここにあるのだ。






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