大規模な太陽光発電所(メガソーラー)を白浜町の旧南紀白浜空港跡地に造りたいという企業が、相次いで現れている。いま全国各地で計画が持ち上がっているメガソーラーは、果たして有望なのか。土地を持つ県と町は、国が検討している自然エネルギー優遇策をにらみながら思案している。
1968年に開港した旧南紀白浜空港は、ジェット化で長い滑走路を確保するために東隣に新空港が造られ、96年に役目を終えた。跡地のうち、再利用しやすい平地面積は約21ヘクタール。県が約13ヘクタール、町が約8ヘクタールを所有する。
当初は県が工科大学の誘致を計画したが、木村良樹前知事が2000年秋に財政難などを理由に凍結を表明。「空き地」の状態が15年あまりも続いている。現在の空港に隣接するため、高層の建物を造れないことも跡地利用が進まない理由の一つだという。
県も町も土地取得に絡む借金はなく、利払いが積み上がるような塩漬け土地ではない。白浜町は夏の花火大会の駐車場にしたり、年に数回、太陽電池車の試験場に使ったりしてきた。県は09年3月に広域防災拠点に指定し、昨年9月の台風12号の際には自衛隊のヘリポートとして役立った。
ここに昨夏以降、企業の熱い視線が注がれ始めた。呼び水となったのは昨年8月に成立した「再生可能エネルギー特別措置法」。太陽光発電などを優遇する固定価格買い取り制度=KM=が今年7月に始まることになった。県と町には非公式なものも含めて5、6社からメガソーラー計画の申し出があった。
メガソーラーとは、1メガワット(1千キロワット)以上の発電能力を持つ大規模な太陽光発電所。堺市の臨海部で関西電力が昨年9月に全面稼働した施設は、空港跡地と同じ面積約21ヘクタールで10メガワットの能力を持つ。一般家庭が使う電気の3千世帯分前後をまかなえるという。
1月中旬、メガソーラー参入をめざす東京の企業が白浜町役場職員らに対する説明会を開き、進出への意欲を伝えた。町の担当者は「高さ制限のある土地で太陽光発電は魅力的ではある」と興味を示す。
しかし、県も町も具体的な検討はまだ。県企業立地課の担当者が期待しているのは2015年の国体と高速道路の延伸。これを見込んで進出を検討する商業施設も出てくる、とみる。
メガソーラー会社に土地を貸せば安定した賃料が県と町に入り、町は固定資産税などの税収が上がるが、「商業施設の方が雇用も生まれ、地元の観光面を後押しできるなどメリットが大きい」と県の担当者は言う。
もう一つの懸念は、固定価格買い取り制度の詳細がまだ決まっていないこと。跡地利用を検討する県企画総務課の担当者は「せっかく進出した業者にすぐに撤退されるような事態は避けなければならない。国の検討を待ちたい」と話す。(張守男)
◆固定価格買い取り制度 価格競争力が弱い太陽光や風力などの自然エネルギーの電気を決まった価格で買い取ることを電力会社に義務付ける。買い取り価格を通常の電気料金より高く設定することで自然エネルギーの普及を促す。買い取り費用は電気代に上乗せされる。
iPhoneからの投稿
1968年に開港した旧南紀白浜空港は、ジェット化で長い滑走路を確保するために東隣に新空港が造られ、96年に役目を終えた。跡地のうち、再利用しやすい平地面積は約21ヘクタール。県が約13ヘクタール、町が約8ヘクタールを所有する。
当初は県が工科大学の誘致を計画したが、木村良樹前知事が2000年秋に財政難などを理由に凍結を表明。「空き地」の状態が15年あまりも続いている。現在の空港に隣接するため、高層の建物を造れないことも跡地利用が進まない理由の一つだという。
県も町も土地取得に絡む借金はなく、利払いが積み上がるような塩漬け土地ではない。白浜町は夏の花火大会の駐車場にしたり、年に数回、太陽電池車の試験場に使ったりしてきた。県は09年3月に広域防災拠点に指定し、昨年9月の台風12号の際には自衛隊のヘリポートとして役立った。
ここに昨夏以降、企業の熱い視線が注がれ始めた。呼び水となったのは昨年8月に成立した「再生可能エネルギー特別措置法」。太陽光発電などを優遇する固定価格買い取り制度=KM=が今年7月に始まることになった。県と町には非公式なものも含めて5、6社からメガソーラー計画の申し出があった。
メガソーラーとは、1メガワット(1千キロワット)以上の発電能力を持つ大規模な太陽光発電所。堺市の臨海部で関西電力が昨年9月に全面稼働した施設は、空港跡地と同じ面積約21ヘクタールで10メガワットの能力を持つ。一般家庭が使う電気の3千世帯分前後をまかなえるという。
1月中旬、メガソーラー参入をめざす東京の企業が白浜町役場職員らに対する説明会を開き、進出への意欲を伝えた。町の担当者は「高さ制限のある土地で太陽光発電は魅力的ではある」と興味を示す。
しかし、県も町も具体的な検討はまだ。県企業立地課の担当者が期待しているのは2015年の国体と高速道路の延伸。これを見込んで進出を検討する商業施設も出てくる、とみる。
メガソーラー会社に土地を貸せば安定した賃料が県と町に入り、町は固定資産税などの税収が上がるが、「商業施設の方が雇用も生まれ、地元の観光面を後押しできるなどメリットが大きい」と県の担当者は言う。
もう一つの懸念は、固定価格買い取り制度の詳細がまだ決まっていないこと。跡地利用を検討する県企画総務課の担当者は「せっかく進出した業者にすぐに撤退されるような事態は避けなければならない。国の検討を待ちたい」と話す。(張守男)
◆固定価格買い取り制度 価格競争力が弱い太陽光や風力などの自然エネルギーの電気を決まった価格で買い取ることを電力会社に義務付ける。買い取り価格を通常の電気料金より高く設定することで自然エネルギーの普及を促す。買い取り費用は電気代に上乗せされる。
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