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円高と元高〜二つの通貨高に見るホームレスマネーの行方と今後』

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『円高と元高~二つの通貨高に見るホームレスマネーの行方と今後』

大前研一 『 ニュースの視点 』より
いつも新鮮な切り口で勉強になります。是非、メールマガジン購読をお勧めしてます。           
 
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 国際通貨
 円が対主要通貨で独歩高
 中国インフレ問題
 7月の消費者物価指数 前年同月比6.5%上昇

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  ▼世界のホームレスマネーが行き場を探している
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 外国為替市場で、円が主要通貨に対して独歩高になっています。
 総合的な実力を示す円の名目実効為替レートは9日に過去最高を更新し、
 政府・日銀による円売り・ドル買い介入への警戒感にもかかわらず、
 円相場はなお最高値圏にあります。

 一方、11日のニューヨーク外国為替市場ではスイス・フランが一時対ユーロで
 5%あまり下落しました。スイス国立銀行が通貨の引き下げに向けて新たな方策
 を検討中との観測が広がったことを受けたものです。

 日本円の独歩高という動きは、明らかな「錯覚」です。
 日本には莫大な借金があっても日本国債を買っているのは日本国民、
 日本国民が逃げ出さないのだから「きっと」大丈夫なのだろう、
 という思い込みによる結果だと私は判断しています。

 日本の状況を正確に判断すれば、「大丈夫ではない」のは明らかです。

 それでも「円高」に進むのは問題視されている通貨は下げざるを得ない
 からでしょう。米ドルは言うまでもなく、ギリシャなどの問題を考えると
 ユーロが下がるのも必然な状況です。すると、残るのは日本円という
 選択肢になります。

 ところが面白いことに、そんな日本円よりもさらに大きく「高く」なっている
 通貨があります。1つはスイス・北欧で、ユーロに属していないのが
 注目されている理由です。

 年初からの対ドル市場通貨上昇率は、日本円:5.7%に対して、
 スイス・フラン:18.5%、ノルウェー・クローネ:8.1%、
 デンマーク・クローネ:7.7%、スウェーデン・クローナ:5.9%となっています。

 さらにスイスや北欧諸国だけでなく、フロンティア市場と呼ばれる国々にも
 資金が流れています。同じく対ドル市場通貨上昇率で見ると、
 パラグアイ・グアラニ:17.6%、モザンビーク・メティカル:16.0%、
 パプアニューギニア・キナ:13.0%という高水準です。

 誰もこれまでに注目したことはないけれど最低限の信頼感がある、
 そんな国々の通貨が買われています。

 パラグアイは南米世界最貧国の1つですし、モザンビークもパプア
 ニューギニアにしても、今まで全く見向きもされなかった通貨です。
 これまでの歴史ではドルに対して弱くなる一方でした。
 ところが、状況がガラリと変わりました。

 この動きを見ると、投機家が何を考えているのか?世界のホームレスマネーが
 何を求めているのか?がよく理解できます。

 要するに、バケツが小さいうちに沸騰させておいて、後から人々が集まって
 きたらすぐに逃げ出してやろうという思惑でしょう。

 行き場をなくした世界のホームレスマネーが、さまよいながら落ち着き先を
 見つけようと必死になっている様子が見て取れます。


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  ▼中国元高により、香港が困る理由
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 中国の7月の消費者物価指数は、前の年の同じ月に比べて6.5%上昇し、
 3年ぶりの高水準となりました。中国人民銀行は追加利上げの時期を
 探っていますが、一段の引き締めは景気を下押しするとの懸念もあり、
 慎重な対応が求められています。

 そうした中、香港ドルが米ドルと連動する事実上のペッグ制について
 アジア経済が急拡大する中、見直しが必要との議論が持ち上がっています。

 昨年末、私は2011年の見通しを述べる中で、世界経済には「4つの地雷」が
 埋まっているという話をしました。日本、中国、欧州、米国です。
 2011年も8ヶ月を経過して、毎週これらの地雷が少しずつ爆破の気配を
 見せ始めています。

 中国の地雷、それは不動産バブルの崩壊です。バブル崩壊の兆しである
 インフレの状況が明確になってきています。中国の消費者物価指数の推移を
 見ると、消費者商品にインフレの影響が見え始めています。

 食品で1割程度、肉類は3割~4割も価格が上昇し、国民の不満も高まって
 いるようです。

 中国人民元は米ドルに対して、「1ドル8.2元」あたりでペッグされてきて、
 直近では「1ドル6.3元」くらいまで変動しています。これは、かつて日本円が
 体験した「1ドル360円」から「1ドル235円」「1ドル76円」まで移行した
 プロセスであり、中国はまさに日本と同じ道を歩んでいると思います。

 このように中国人民元が高くなることで、香港が困った状況になっています。
 香港ドルは元々英ポンドペッグ制でしたが、その後一時変動制に移行した後、
 1983年から米ドルペッグ制を採用しています。1997年香港が中国に返還され
 ましたが、この制度は未だに維持されています。

 中国政府が勝手に香港の準備金を取り崩すことを防ぐという狙いもあり、
 香港ドルの米ドルペッグ制は簡単には解消することができないまま
 今に至っていますが、中国人民元が対米ドル「6.3元」のラインまで高く
 なってきて、段々とおかしな状況になりつつあります。

 香港経済の状況として必要性がなくても、米ドルにペッグされているため
 米ドルが弱くなると香港ドルも弱くなってしまうからです。
 これは中国としても必要性を感じていないでしょうし、望んでいないこと
 だと思います。

 米ドルペッグ制を解消することも検討されているようですが、ここには
 英国・中国間の二国間協定も絡んでくるので、英国の了承なしで進めること
 はできません。香港にとっては非常に悩ましい状況が続いています。


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