時代は移っているんだね。
日系製造業、次の一手 中国経由でカンボジア進出
産経新聞 2012/09/01 12:31
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【上海摩天楼】
「中国で長年操業してきた日系製造業が、続々とカンボジア進出を果たしている」。上海日本商工クラブが8月22日に上海市内で開いた「カンボジア投資セミナー」で、日本貿易振興機構(ジェトロ)の道法(どうほう)清隆プノンペン事務所長はこう訴えた。
対中進出した日系企業は、安価で豊富な労働力を頼りに上海近郊など中国に工場をつくってきたが、賃金の高騰と労働者不足が予想外に進行した。労働集約型の繊維、靴、玩具といった業種は、四川省など中国内陸部や東南アジアなど、人件費の安い投資先への「次の一手」となる工場移転が急務になっている。
コスト事情に加え、中国では、沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題をはじめ、日中関係がこじれるたびに「反日デモ」が吹き荒れ、労使関係や不買運動などに飛び火する懸念が増大。こうした状況を、カントリーリスクとして無視できない危険水域に達したとみる日系企業も出てきた。
同クラブが、これまで上海で開いた国外投資セミナーは、インドに次いで今回のカンボジアが2カ国目で、約30社が参加する盛況ぶりだった。
過去に日本から直接、東南アジアに投資した製造業も少なくないが、最近の動きは、中国経由がキーワードになっている。
◆投資も人民元建て
江蘇省内に複数の自社工場や委託加工の工場を持つ上海の日系企業幹部は、「まず、中国内で特に人材が集まりにくくなった地域や製品の工場をカンボジアに移設し、中国で育成した中間管理職をカンボジアに赴任させることを考えている」と明かした。投資も、中国で稼いだ人民元建ての資金を振り向ける。
最低賃金が米ドル建てで月額61ドル(約4800円)で、中国の同約1500元(約1万8500円)の約4分の1に抑えられるカンボジアだが、人件費だけを考えれば、ラオスやミャンマー、バングラデシュなども有力な移転先の候補といえる。
ただ、道法氏は(1)労働集約型の業種でも、法人税免除などの優遇税制が適用される(2)政治体制が比較的安定している(3)30歳以下の若者による国内消費市場の勃興が今後期待できる-などを挙げる。「条件を比較した上で、中国からの移転先を消去法でカンボジアに決めるケースが多く、昨年は金融など非製造業を含む日系の86社が進出した」という。
◆生産性向上に活路
工場移転をせずに、次の一手を打つ製造業もある。
「中国で工場の生産性をいかに高めるか」。TDK中国本部副本部長の井出亨氏は何年もの間、「生産性」の3文字に心を砕いてきた。
エレクトロニクスは、衣料品など人手に頼らざるを得ない業種とは事情が異なる。中国においても、ベルトコンベヤーに沿って作業員が並ぶ光景はもはや過去のものだ。
TDKが福建省アモイに置く工場。電子機器向け電源に使われる小型トランス(変圧器)の生産ラインは、すでに約7割の工程が自動化され、複雑な工程の部分だけ、1人で何役もこなす「多能工」を残した。
生産システムは、すでに日本国内の最新鋭工場に近い。従業員1人当たりの生産能力や売上高、利益率など、総合的な生産性を中国で2倍に高めるとの意欲的なターゲットがある。
人件費急騰など経営環境を脅かす問題があっても、整備されたインフラ、材料や部品調達先から製品の販売先、巨大な消費市場までそろった中国の存在感は大きく、採用する人材の層も厚いと判断しての残留だ。
製造業にとって、カンボジアのような新天地も選択肢の一つなら、「中国の比較優位性」を生産性の大幅な向上によって再び手中に収める戦略もある。いずれにしても、「中国とどう向き合うか」が最大の経営課題であることは、疑う余地がない。(上海 河崎真澄)
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