再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が7月に始まるのを受けて、この分野への企業の参入が相次いでいる。電気・情報システム関連工事を手掛けるコモン(東京都千代田区)もそんな一社だ。買い取り制度を利用することで、災害発生時のバックアップ電源となる太陽光発電パネルや蓄電池を病院に無償で設置する仕組みを考案。これまで培った技術力を生かして太陽光パネルの設置事業者として実績を積み、将来の飛躍を狙っている。
病院には人工呼吸器、心電図モニター、無影灯など電気を必要とする医療機器が多数ある。このため、多くの病院では非常用バックアップ電源設備を備えているが、その多くは重油や軽油などで動くディーゼル発電機で、停電が長時間に及べば燃料切れの恐れもある。
震災後、被災地の病院が電源で困っていることを知り、飯田佳昭社長は「今までの経験を生かして何かできないかを考えた」という。そこで考案したのが、病院の屋上に太陽光発電パネルや蓄電池などの設備を無償で設置し、病院側は非常時のバックアップ電源として利用できる仕組みだ。
病院の屋上に設置するのは、出力100キロワットの太陽光パネル、蓄電能力14キロワット時の蓄電池、そして直流を交流に変換するパワーコンディショナーだ。設備の合計金額は4800万~5000万円にもなる。これだけの設備を無償で設置できるのは、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を利用するからだ。
実は資金の出し手は海外金融機関も参加するファンド。電力会社は7月から太陽光で発電される電力を一定の期間、一定の価格で買い取ることが義務づけられるが、通常時は病院で発電した電力の売電収入はすべてファンド側が得る。初期投資は一定の利回りを乗せたうえで売電収入によって回収するのだ。
資金の出し手として手を挙げているのは現在12ファンド。15~16年程度で投資資金を回収できる見通しで、その後は太陽光パネルなどの設備の所有権が病院側に移ることになる。
対象となる病院は、全国に及ぶ。このため、実際の施工はコモンだけでなく、同社も加入するエコシフト技術工事協同組合の協力も得る。これまでのところ、東京、千葉のほか、九州地区でも2件の引き合いが来ているという。飯田社長は「コモンだけで年間3件、協力会社も加えれば、年間20~30件は受注できる」と、新事業に手応えを感じている。(高橋俊一)
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コモン、太陽光設備で飛躍へ 再生エネ買い取り制度で投資回収
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