4月のちょっといい話~変わる~
新規採用1年を経て,念願の担任を持つことになった春休みのことでした。
私は,今度初めて出会う子どもたちに,どんな言葉をかけて学校生活のスタートを切らせられるか思案をめぐらせて,不安の波に押し流されそうになっていました。
そんな,ある日のこと。クラス運営の資料づくりに奔走していた職員室前の廊下で,私は校長から呼び止められました。
「何かのときのために,読んでみて・・・。」
と一枚の紙を渡されました。それは評論家の外山滋比古さんが書いた,入学する子どもたちに向けて「贈る言葉」と題したエッセイでした。
そこには,進級を機に新しく生まれ変わろうとするものの,これまでのマイナスイメージを払拭できずにもがくPという子どものエピソードが書かれてありました。
生まれ変わったつもりで,猛烈に勉強してみようと張り切るPさん。しかし,これまでの「できない子」のイメージがじゃまをして,周りの友達や先生までもがからかい,せっかく火のように燃えていたPさんの向学心は級友たちに水をかけられてすっかり勢いを失い,「どうせ,俺なんか・・・」と捨て鉢になる様子が書かれていました。
『生まれ変わったつもりで猛烈に勉強してみよう。たいていの人は何度かそういう決心をするものだ。しかし,そう思っただけでは,なかなか変われるものではない。周りが変わるのを妨げる。』というのです。
そして,変わろうとするPさんを応援するかのように,「君子豹変す」の本当の意味が説明されていました。
『君子は豹変す,という言葉がある。態度や意見ががらりと変わること。この頃は時にはよくないほうへ変わるのも意味するが,もとはよいほうに移るのを言った。入学は,諸君にとって君子豹変の初めてのチャンスである。』と記されていました。
この,一枚の紙を校長からもらい,私の不安は消え,肩の力がすうっと抜けました。
これから入学してくる子どもたちに,どんなことを言おうかと,表面だけの言葉でつくろう作業に追われていた私は,変わろうとするエネルギーがいっぱい詰まった子どもたちにとって,何が大切なのか,どうすればいいのかをこの校長との出会いで教えられました。
人との出会いによって,人は変わり,傷付けられもし,勇気付けられもします。
子どもたちどうしの『仲間づくり』の大切さに気付き,ありのままの自分で,子どもたちに向き合い,かかわっていく行動こそが,私に求められていたのでした。
鹿児島県教育委員会 ちょっていい話 より
http://www.pref.kagoshima.jp/kyoiku/jinken/hanashi/sigatunotyotto-kawaru.html
iPhoneからの投稿